『反抗的人間』はアルベール・カミュによって1951年に書かれた評論で、フランス思想界を中心に関心を集めました。特に『反抗的人間』をめぐってカミュとジャン=ポール・サルトルとの間に行われたカミュ=サルトル論争は有名です。

今回はそうした著名な論争を巻き起こした『反抗的人間』を読み解いていきます。

 

『反抗的人間』の概要

『反抗的人間』は西ヨーロッパを中心にした社会における、革命と反抗の歴史的発展と形而上的発展を扱った評論です。『反抗的人間』は、カミュが自殺と不条理の概念をめぐって始めた考察を,殺人と反抗の領域の中で続けることを目的としていました。

『反抗的人間』は以下のような大きな論点を含んでいます。

 

反抗と歴史的革命の違い

カミュは、『反抗的人間』のなかで、人間は反抗しなければならないが,その反抗は反抗がそれ自体のうちに見出す限界を、人間は結合することによって存在し始める限界を尊重しなければならず、その意味で反抗と歴史的革命ははっきりと分けられるとしています。

 

形而上的反抗と革命の関係

カミュは、形而上的反抗とは人間がその条件に対して、また全創造に対して立ち上がる行動であり、黙して語らない世界へ積極的に働きかけることだとしました。その上で、革命は形而上的反抗の論理的帰結に過ぎないとしています。

 

ニヒリズムの元凶である革命の過誤

また、カミュは、人間の自由はそれぞれその最も深い根本において相対的であると述べ、同じ章で、革命の過誤は、人間の本性から分離することができないと思われる限界、 反抗が正しく示している限界を全く知らないか、あるいは故意に誤解しているかによって起こったのであるとして、革命をニヒリズムの元凶であると主張しています。

 

『反抗的人間』への反響

カミュが発表した『反抗的人間』に対する反響は大きく、賛否両論ありました。

『反抗的人間』の読み解きの一環として、当時の反響を紹介します。

『反抗的人間』に対する評価

フィリップ・ソディによれば、『反抗的人間』は発行後一年のうちに七万部売れたとされています。また、フィリップ・ソディは『反抗的人間』に対し賞賛を送った人物として、フランスのアンドレ・ルソー、クロード・ブールデル、イギリスのサー・ハーバート・リード、フィリップ・トインビーなどの名前を挙げています。

 

『反抗的人間』に対する批判

『反抗的人間』に対する批判として最も有名なのは、やはりフランシス・ジャンソンの批判に端を発したカミュ=サルトル論争でしょう。火種となったジャンソンの論文は「革命を哲学者の観点から考察するだけで,通俗な(歴史的あるいは経済的)原因を除外している」として『反抗的人間』を批判しました。

 

まとめ

カミュの『反抗的人間』は大きな反響を集めた評論であり、ジョン・フォーリーは以下のように述べています。「『反抗的人間』は、哲学的に、カミュの中で最も重要な著作である」「しかしながら、厳しく中傷され、しばしば無視されている」

『反抗的人間』は非常に評価の分かれる一作といえるでしょう。