多くの小説を世に送り出してきたアルベール・カミュですが、彼の作品を元に作られた映画も数多くあります。劇作家としての側面も持っていたカミュの小説ですから、映像になっても素晴らしい作品になっているわけです。原作がとにかく好きという人も、原作は気になっているけれどまだ読んでいないという人も、映画という形でカミュの世界に触れてみませんか。

1. 映画化された有名な作品

カミュの代表作としてやはり一番有名なものは「異邦人」です。映画のタイトルもそのまま「異邦人」となっています。監督はルキノ・ヴィスコンティです。この映画が制作されたのは1968年のことですが、最近になってデジタル復元版が上映されることになり、改めて話題になっています。監督の話によると、とにかく原作の世界観を忠実に再現することが最重要であったとのことで、まさに原作の熱量がそのまま詰め込まれた映像です。

「最初の人間」はカミュの遺稿であり、彼の没後30年以上経過後に発見された小説です。映画の制作は2011年、ジャンニ・アメリオが監督を務めました。未完のまま出版され、大きな話題となった小説が映像化されたことで、こちらも大変話題になったのです。他者との共存、弱者への共感、暴力による解決への反対など、カミュの思いもぎっしり詰め込まれた作品となっています。

「プレイグ」という映画もカミュの原作です。カミュの小説の中に「プレイグ」というタイトルのものはありません。実はこちらはカミュの代表作の一つである「ペスト」を映画化したものなのです。ペストはドイツ語で感染症のことを指していますが、同じ意味合いで英語ではプレイグと言います。つまり英語版のタイトルになったということです。人々を突然襲う病というものは、カミュが打ち出す「不条理」の概念そのものであり、避けられないものであるということが強く描かれています。

2. カミュ自身も映画に

カミュ自身の人生を題材とした映画もあります。タイトルもそのまま「アルベール・カミュ」です。カミュの人生を、カミュを愛する女性の視点から描く、というものになっています。小説からは読み取りきれない、カミュの内面(ロマンチスト、奔放でありながら内向的)を知ることができる映画です。子供時代から晩年まで淡々と描かれており、「カミュの作品」というよりは「カミュという人物像」に興味がある人には、特に刺さる映画であると言えます。カミュのかっこいい部分だけでなく、弱い部分もきちんと描かれているところが観る人の共感を得ているようです。この映画をきっかけにカミュの作品を読んでみようと思ったという口コミもありました。

3. まとめ

アルベール・カミュ関連の映画は色々とありました。原作に強い思い入れがある人は「映画なんて」と思うかもしれません。しかし、映画という違った媒体で物語を辿ることで何か新しい発見もあることでしょう。活字が苦手でカミュの作品を読んだことがない人も、映画だったら浸りやすいと思います。まずは一度、カミュの作品を映画で味わってみることをおすすめします。